世界放浪記 18カ国目はイタリア
日曜日のミラノの昼下がりに公園に行き日陰で少し仕事をこなしていた。
一息つき、ふと気がつくと、どこからともなく太鼓の音色が響いている事に気づく。
意識していなかったが恐らく私が公園に来てからずっと流れていた様だ。
その音の正体を探るべく公園の更に奥に足を運んでみた。
そこには、20個ほどの太鼓が並べてあり、黒人が陽気に太鼓を叩いている。
さらに近づき、良く見てみるとそこには黒人以外の白人も一緒になって太鼓を叩いていた。
さらに良く見てみると子供の混ざっている。
しばらく観察すると以下の2点が分かった。
1、主催の黒人集団6〜8人くらいが20個の太鼓を公園に持ってきて演奏を始めた様だ。
2、残りの10個以上の太鼓は、通りすがった人が誰でも太鼓を叩いて体験できるようにしている。
3、太鼓を体験する人は、いつ参加しても良いし、いつやめてもいい。
4、定期的にフィナーレを迎え音楽が止むと、リードしてくれる太鼓の人によりリズムが変わる。
このプロと素人の奏でる演奏が毎回素人はチェンジされるのだが・・・
必ず全員で一体になり
必ず全員でボルテージは最高潮まで上がり
毎回最高のフィナーレを迎える。
ここには一切のルールも無ければ・・・言葉すら存在しない。
全員そこにいるのがどこの国の人かも分からなければそもそも言葉は話していない。
この光景に興味を持ち、何回もフィナーレまでの流れをよく眺めていると以下の流れが出来ている事が分かった。
1、その回の基本リズムを刻むリーダー格の人がビートを刻む
2、プロの黒人達がそのリズムに合わせたサブのビートを刻む
3、始めはこのプロ6〜8人くらいがただ楽しそうに太鼓を叩く
4、すると見よう見まねで太鼓を素人が叩き出す
5、素人用の太鼓全てが埋まるまでは、とにかくプロの6〜8人がリードしながら楽しげに太鼓を奏でる。
6、素人も一定期間太鼓を叩いていると、演奏はしていないプロからこうやって叩いてごらん!と短いリズムを繰り返すように教わる。
※素人が太鼓を叩き始めて直ぐは絶対に教えない。明らかに下手な人も参加してるのを見て他の人も参加しやすくなるからだ。
7、その回の参加者がある程度、リズムの調和が取れてきたのを見計らいプロの6〜8人たちが一気にテンポをあげてドンドン激しいリズムになっていく。
8、素人は同じ太鼓の打ち方でただテンポが加速しているだけだが、周りのプロがアレンジをしだすので、なんとなく凄い音楽になってきてる気がする。
9、そして最高のフィナーレを迎えるのだ。
ここには凄いノウハウがたくさん詰まっていた。
基本的に会社の10年後の未来を考えているのは社長(組織のトップ)くらいだ。
だから、10年後を見据えて新しい事にチャレンジしようとするとまぁ社内は付いてきてくれない事が多い。
時には社員に新たなチャレンジの必要性を説明して説得しようと試みる。
それでも理解されなければ、さらに詳しく、時間をかけて説得しようと試みる。
それでも理解されなければ、ルールを変えたりして、強制的に会社が変わることを伝える。
しかし、それではいつまで経っても社員の変化のスピードに合わせてしか会社が変われなく
そんなに悠長にまっていられない事に気づき社長や部長1人だけでも、やり遂げようと動き出す。
普通はこうした流れの中で、やりきった社長や部長だけが新規事業を軌道に載せられる。
しかし、1人だけで進めるには基本的にはマンパワー的に限界があり、大抵の新規事業は上手くいかない事が多い。
そんな中で、説得も言葉もルールも使わずにメンバーが変わっているのに、毎回異なるリズムで最高のフィナーレにまで持って行っている。
ずっと眺めていると以下の2つポイントに気づきだした。
1、欲を上手く操っている
①主力メンバーたちが楽しそうする
②過度な加入は行わない
③一緒に参加したいと思った人だけを仲間に入れている
2、目的は最高のフィナーレを迎えることで、そこに時間軸は存在しない。
①行動を起こすことを最優先にして質は問わない
②下手な人も直ぐに上達させようとしないので参加のハードルを下げる
③一定数が変化に慣れた所で、一気に加速度的にスピードを上げる。
この流れで成果(最高のフィナーレ)を迎えると参加した素人の中には自分達でこの音楽を作り上げた高揚感から1時間近く叩き続けているイタリヤ人夫人もいた。この人は恐らく次の幹部候補になるだろう。
私は最近、予算など数字面の時間軸を設ける事があまり組織を機能的に動かしていない事に気づきだしていた。
それより、「何ができるようになる?」というプロセルのステップをそれをクリアしないうちは次のステップに移らない。
つまり、1つのことだけに集中する経営スタイルの方が絶対に成果の最大化と最速化に繋がると確信していたので尚更、今回の公園での太鼓の演奏は
この考えをさらに企業経営だけではなく組織運営というさらに大きなテーマにおいても本質であることに確信を与えてくれた。