2013年4月12日
第1章『昨年対比1250%の業績の上げ方~概念編~』
1節:その1、努力している。どれくらい?
【情報を発信する努力】
ネットショップは、必ず価格競争と真正面から向き合わなければならない。
それは、どれだけ理想論を唱えても超えられぬ壁と思っていた。
そんな価格競争が激しくなって来ている昨今において、ポツリ・・ポツリと価格競争を回避しつつある企業が出てきた。
その様な企業がどの様な事をどれくらいのレベル感で行っているかご紹介しよう。
その会社の1つは、雑貨屋さん!
どこからでも仕入れられる商品。つまり、どこでも売っている商品を定価販売して、昨年対比170%を実現している会社が存在する。
私は、船井総研内のネットショップの経営者の集まりであるEC経営研究会においてその方にお話をしてもらうべくアポイントを取った。
すると、その会社の社長は・・・『同業者の方とは関係を持たない様にしているのです』と講演依頼をあっさり断られた。しかし、私もガキの使いじゃない。そのまま、『はいそうですか!』とは引き下がれないので・・・『様々な商材ごとの1番店さんだけの勉強会なのできっと社長にも刺激的な情報交換になると思いますよ』と伝えた。
すると・・・『だから、会いたくないのですよ。あって様々な成功事例などを聞くと色々やりたくなってしまうので・・・今回はせっかくお誘い頂いたのに申し訳ありません』と丁寧に断られた。
私は、思わぬ回答にビックリしてしまい、そのまま引き下がってしまった。
それから1週間『成功事例などを聞くと色々やりたくなってしまうので・・・』と言う言葉が頭から離れなかった。
そこで、もう一度、その社長に電話をして、『成功事例などを聞くと色々やりたくなってしまうので・・・と言う所に何かしらの信念を感じましたので私だけでもお会いしにいっても良いですか?』と再度お願いすると今度は快く了承して頂けた。
そんなこんなで、やっとその価格競争を回避している雑貨屋さんの社長にお会いする事ができた。そして、話を聞くにつれてこの成功事例はまぐれに近い程、再現性が低い事が分かった。
まず、なぜ価格競争を回避できているかについてだが、この社長が言うには、『物を売っている時点で価格競争は絶対に回避できない。しかし、事(ストーリー)を売っても結局、価格競争は、回避できない。なぜなら、競合が同じようなストーリーで販売されれば、結局は一緒。だから結局、人でしか、価格競争は回避できない!』と仰っている。
では、この雑貨のネットショップはどの様にして、お客様を物でも事でもなく人(従業員)に付けたのか?
その答えは、『記事(コンテンツ)』である。
このお店ではブログはもちろん商品ページも記事(コンテンツ)と読んでいる。そして、その記事を誰が書いたのかが分かるようにしており、その記事を書いた人がこれまでにどの様な記事を書いたのかも分かり易くしている。
そして、このお店の記事(コンテンツ)を作成する事に対するこだわりが尋常ではない。
どの様な事にこだわっているかと言うと①採用②損得を考えない③話題づくり
まず、そもそも採用は、ライティング(記事を書けるか?)が出来る事を条件として採用している。
この採用に対する考え方もこの店の社長の言葉を借りるとしよう!
『経理に女優はさせられないが・・・女優に経理をさせる事はできる。』全くもってその通り。案外自社で記事をかける人を探すか、いなければ時間をかけて記事を書ける様に育てようと考えるのが一般的だと思うが・・・この社長がいかにライティングの重要性を認めているか伺える。
そして、もう1つ特徴的なのは記事を書く時に損得勘定を行わない点だ。通常商品ページはその商品がどの様な商品かを伝えれば伝えるだけ売れやすくなる。しかし、全ての商品を作りこめばそれだけ人件費がかかるので大抵のお店ではまず商品を掲載し、売れている物だけ更に売るように時間とお金をかける。
上記の事を更に細かく説明すると、商品の粗利額からどれ程のコストをかけて良いかを算出すると言う事。
しかし、このお店は1万円の商品だろうが、300円の商品だろうが商品ページの作りこみは変わらない。伝えられる情報があるだけ伝えると言うスタンス。
これは、社長がこのネットショップを雑誌にしたいと言う思いから来ていると思う。雑誌であれば、紹介する記事によってお金は生まれないので上記の様な損得勘定は行わない。ただユーザーにとって面白い記事をかけているかどうかだけが重要で、面白い記事さえかけていれば人はまた読みにくる。雑誌は多くの人が読めば雑誌自体の代金や広告料金により利益を生み出す。そして、この社長が考える雑誌型のネットショップはこの雑誌が広告料金をもらう変わりに商品を購入してもらうだけと言う考えだ。
そして、最後の特徴は記事(コンテンツ)を書くための話題づくりだ。この話をお伺いした際に通されたのは普通のマンションの1室だった。その1室は実際の業務を行う場所から徒歩1分の場所にある従業員がご飯や休憩をするためのリラックススペースだそうだ!
そして、この社長いわく、このリラックススペースは従業員満足度を上げる為はもちろんだが、1番は記事を書くために作ったと言っている。
このリラックススペースができるまでの一連の流れを記事(コンテンツ)に出来るからだそうだ。
つまり!
① 従業員満足度を高めるために何をすれば良いかの会議を開きました。②リラックススペースをどこに持つか決定しました。③内装をどの様にアレンジするか話し合いました。④現状はこんな感じです。⑤リフォームが始まりました。⑥途中経過です。⑦リフォームが完成しました。⑧家具などのレイアウトはこんな感じです。⑨日頃こんな使い方をしています。
上記の様に多くの記事が生まれる。そして、この記事を読んだユーザーはこの記事を通してこの会社が何を大切にしているかを知る事ができ、その考え方に共感できればファンになってくれる可能性がある。
そして、そのファンと言うのは企業また、従業員1人1人にである。そして、価値観を共感できる人が進めている商品であればそのまま購入すると言う流れを生み出している。
そして、この会社の最も凄い所は実は、上記の様なこだわりよりも、それらを実現させるためにその他の事を全て捨てている所にある。
仕入先も卸会社、数社しか取引が無いので仕入れ開拓に使う力を記事作成に注げる。また、定価販売をするから競合の価格競争をする手間を省ける。そして、究極はこの社長は人付き合いすら捨てていると言う事。少し誤解を生みそうなのでまた社長の言葉を借りよう。『外部に顧問的な役割の人は数名いるがその人にはかなりの人脈が存在する。であれば、私には人脈は必要ない。』
ここまで、徹底したランチェスターな考え方は私にかなり大きな影響を与えてくれた事は言うまでもない。
この様に、ただ情報を発信するだけではなく質・量を突き詰めると言うのが情報発信を努力するレベルと言う事だ。
本日伝えたい事『何を捨てるか?そこに思想がでるわな!』