7月18日
本日は滋賀県の介護タクシーを運営されている大西様の所にお話を伺いにいった。
介護タクシーとは高齢者の方が通院する際や買い物をする際に送り向かいをしてくれるタクシーの事指し、その会社によってただのタクシーとしての機能のみの場合やヘルパーさんが同乗してくれる場合などさまざまな形態が存在する。
今回お話を聞かせてもらった大西様の介護タクシーの場合はヘルパーさんも同乗する事により利用者の家族が付き添わなくても通院や買い物が可能と言う通常業務の他に旅行の手伝いも行っている。
旅行の手伝いと言っても普通の旅行ではない。高齢者の方が・・・特に余命が宣告されている方などが最後に行きたい所へ連れて行ってあげると言うサービスを行っている。
本日は数ある実際の話の中から熊本に里帰りしたおじいちゃんの話をしてくださった。
相談があったのはそのおじいちゃんの娘さんから!おじいちゃんは熊本生まれ熊本育ちなのだが年を取ってからは約17年間故郷に帰れていない。既に認知症が進んでいるおじいちゃんだがいつも口癖のように熊本に帰りたいと言っているので一度連れて行きたいのだが病状も芳しくなく介護をしながらの長旅は私一人では無理なので手伝って欲しいと言う話だった。
そこで大西さんは主治医の先生と相談をして万が一の場合に備えて主治医の先生から紹介状を書いてもらい旅先の熊本の病院を手配したり、長旅の際の休憩ポイントを入念に打ち合わせを行いおじいちゃんの体に負担が最小限になるように配慮して旅行プランをたてた。
しかし、当日おじいちゃんの体調がすぐれなかったのでそれまで予約していたホテルなどもすべてキャンセルしまたおじいちゃんの体調が良くなるのを待ちそしてようやく13時間の長旅の元に念願の熊本入りを果たしたそうだ。
故郷に帰るとおじいちゃんの事を親戚一同が出迎えてくれた。その中にはおじいちゃんのお兄さんも入っている老人ホームから外出許可を取り駆けつけてくれていた。そのお兄さんも既に認知症が進んでいるので親戚一同は会ってもお互い分からないだろうと思っていたが・・・
二人が会うと・・・
お兄さんがおもむろに弟の手を握り・・・
気づけば二人とも無言で泣いていたそうだ。
この里帰りから帰ってくるとおじいちゃんは徐々に元気になりハッキリしている時は旅行の時に着ていた赤い服を押入れから引っ張ってくるのが日課になっているそうだ。
一時はもう長くないと言われていたおじいちゃんだがそれから冬も越し今年の春には大西さんたちと一緒に花見も行い家族ぐるみの付き合いをされているそうだ。
私の文章では伝わらないかも知れないが何とすばらしい職業なんだろうと心から思った。
介護は暗い部分を非常に多く秘めている。しかし、この様な明るい介護が存在する事をもっと大西さんには発信して頂きたい。
また、凄いのはこの娘さんも凄い!介護をお金で買うと言う抵抗のある行為に踏み切ったという点である。既に介護施設が存在するから特に新しくないと思われるかも知れないが大西さんの様な旅行業は現在介護保険も適用されていないのでそれなりの金額がする。
また、介護保険が適用されているサービスについてもどこか介護は自分たちで行わなければならないと言う義務的先入観はいまだに根強く残っているのも事実。
しかし、その人の幸せだけを本気で考えた際に出た結論であれば本来誰が介護してもいいはずであり、むしろ任せた方が良いケースだって必ず存在するはずだ。
その結論を出した時に本気でそのおじいちゃんの事を考えていたかは必ず伝わるものだと思う。
この旅を通して多くの人が幸せになった。
『おじいちゃんとお兄さん』はもちろん。今では娘さんはよく『やれる事はすべてやったので何の悔いもない。今は本当に落ち着いた気持ちでいられるので、その時が来てもすんなり受け入れられると思います』と大西さんに語っているそうだ。そして、こんな素晴らしい1シーンに出会えた大西さんもその一人であろう。
ほんとに親孝行とは親の死を受け入れるための手段であり、究極の自己満足なのだと思うしそれで良いと思うし、そうあるべきだと思う。
本日伝えたいこと『みなさんも是非、自己満足して欲しい』